FIDESレター 2017年8月号
ドイツ人の働き方に学ぶ〈後編〉 成熟した大人の国、ドイツ
ドイツ人は凝り性で規則好き、完全主義で勤勉でしかも心配性、リスク管理や節約、更には合理化が大好物、そんな先入観を引っさげてドイツに乗り込んだ。ところが見るもの聞くもの、私の目には横柄で杜撰な国としか映らない。謎は深まるばかり…のまま、視察先の企業に足を伸ばした。
ドイツでは化石燃料や原子力に頼らず、太陽光、風力、バイオガスなどを用いてエネルギー消費『ゼロ』の住宅を2030年までに100%普及させることを目指している。そんな一翼を担ったフランクフルト郊外にあるパッシブハウスと言う会社が視察先である。建設コンサルタント業務、建築設計業務、メーカーや企業と提携して省エネの新技術や新工法の開発研究をしている社員数50名ほどの会社である。パッシブハウスで開発した液晶の窓ガラスや高断熱の素材、高効率の熱交換器などの説明を聞き終え、質疑応答の時間となった。通訳を介しているもどかしさはあったものの、そこは万国共通の技術者同志、何とかお互いに理解を深められた。
最後に今回の研修旅行の最大の目的である“働き方”について質問をぶつけた。「本当に定時に退社するのか?」「そうだよ!」「同僚が繁忙の時はどんな対処をするのか?」「上司の指示に従い、喜んで協力するよ」と、なんともそっけないやり取りに終始し、正直、拍子抜けしてしまった。消化不良のまま帰りのバスに乗り込む。同行した日本人通訳にしつこく訊ねたが、逆に「なぜ、労働時間が短いのか?とか、本当に残業はしないのか?とか訊かれても、法律で決められているから、としか応えようがない」と云う。どうも時間外労働や働き方の質問自体がナンセンスで、我々の質問の意図が理解できない、ようだった。成る程、そうか、少しずつ謎が解け始めてきた。ドイツではが先導し、業種ごとに労働組合をつくり、労働条件やルールについて協議、合意する。約束を守らない企業には厳しい罰金が科せられるというのだ。更に、部下の労働時間は、上司の手腕にかかっており、長時間労働は上司に罰金が科せられる事例もあるようだ。だから上司は労働時間管理に懸命にならざるを得ない。
ただ闇雲に労働時間を制限している訳でもない。長時間労働は労働者のやる気を失わせ、結果スキルも高まらず、レベルの高い技術開発や新しい素敵なアイデアを生み出すことも出来ない。高い付加価値を生み出す源は国民一人ひとりであり、心身ともにリフレッシュさせることが不可欠だと考えている。更に訊ねると「ドイツ車は100万kmも走行可能であり、アウトバーンでは時速200km/h以上で走り、急ブレーキを踏んでも耐えられるよう、技術の粋を集めて造っている。世界のトヨタ車とて耐えられまい!」と。確かに日本の車は殆ど見かけない。住宅は100年以上、車だって30年位は、子々孫々の代まで伝えるのがドイツでは当たり前らしい。その背景には技術大国を自負するプライドや完璧主義がある。だから決して手抜きなどを許さず、安物は全く信用しない。安売りは労働力や技術力を冒涜する“悪”と捉えているのだ。一消費者として部品や材料は産地や製造者まで自らの目で監視し、そのような企業の商品には、不買運動にまで拡がることもある、安売りは正に自業自得、彼らにとっては死活問題なのだ。漸くドイツ人の価値観に共鳴し、合点が行き、謎が解け始めた。正に成熟した大人の国なのだ。
その後の夕食会で現地の日本人ツアーコンダクターと意見交換をする機会があった。「ドイツ人はまじめでルールは守るし、役割が明確でとても働き易い」「仕事と私生活にきっぱりと線を引いているので、煩わしさがない。福祉が充実していて、とても暮らしやすい、日本に戻りたいとは全然思わない」と異口同音に話してくれた。節約と合理化、リスク管理が大好物のドイツ人は、時と、物と、金をとても大切に使う。一度しかない人生を“目一杯”謳歌するドイツ人に“乾杯”を送り、そして、ドイツ人の合理的な働き方に日本人は“完敗”してしまった、と感じた。
真面目で勤勉な気質、高い技術力など、日本人はドイツ人との共通項も多い。ドイツ人に負けない優秀な日本人が、知恵を絞り、働き方改革に真摯に取り組めば、世界一付加価値の高い産業を創出することも夢ではないだろう。日本人独特の、きめ細かな“おもてなし”の精神で顧客の立場に立ったサービスをご提供し、適正な利益を頂くことだって出来るに違いない。これこそが真の働き方改革ではなかろうか?今や企業を存続させ、成長させるには、この『働き方改革』を避けては通れない。
1996年の米国研修旅行での衝撃から無謀とも言われた“脱下請け”を目指し、宣言し、今年で25年目、ほぼ100%“脱下請け”を達成できた。次の一手は、これだろう、そう、地球規模でのエネルギー問題や環境に真正面から取り組み、未来にわたり豊かで幸せな生活や働き方を手にしているドイツからの衝撃、“ドイツショック”。このショックはフィデスに変革をもたらし、お客様に新たな“商品とサービス”をご提供できる“きっかけ”を予感させてくれた研修旅行でもあった。
弊社では、隔年で実施する海外研修旅行を通し、海外の文化や習慣等に触れ、感性・感覚を磨き、見聞を広げ、心豊かな社員を育成しております。今回は、EU最大の経済大国として発展を続けており、労働先進国と呼ばれているドイツへ行って参りました。
ドイツの国土・気候
ドイツ連邦共和国(以下:ドイツ)は、ヨーロッパの中心に国土を持つ国であり、約35万7000㎢の国土を有する連邦共和制国家です。首都はベルリン、国内は北部低地、中部丘陵地域、南部アルプスの3つの地域に大別され、北部にはエルベ川、西部にはライン河、南部にはドナウ河が流れています。ドイツ北部は海洋性気候、中・南部は大陸性気候に属しています。山岳地帯の冬はかなり厳しい寒さですが、夏は湿度も低くさわやかです。
大規模都市・フランクフルト
フランクフルト・アム・マイン は、ヘッセン州に属す郡独立市です。人口 69万人を超えるヘッセン州最大の都市です。
現在のフランクフルトは国際金融の中心地であり、工業や産業の中心でもあります。経済的側面から世界都市の一つに数えられており、様々な金融機関が存在します。また、フランクフルト空港は世界最大級のハブ空港であり、鉄道についてもヨーロッパ最大級のターミナル駅であるフランクフルト中央駅があります。
パッシブハウス研究所訪問 Besuchte das Passivhaus Institut.
ドイツ・ダルムシュタットにある『パッシブハウス研究所』へ訪問しました。
パッシブハウス研究所は、1996年にヴォルフガング・ファイスト博士が設立した研究所です。パッシブハウス(Passive house)とは、今回訪れた『パッシブハウス研究所』が規定する性能認定基準を満たす省エネルギー住宅のことです。建物の性能を上げる事により、高性能の熱交換器による空調設備だけで、アクティブな冷暖房器具が不要であるという意味合いから『パッシブ(passive:受身の)』の名が付けられました。
パッシブハウスは西ヨーロッパで普及が進み、気温が-20℃にもなる極寒の地でも、暖房なしでも過ごせるほどの性能で、その省エネ性、断熱性、気密性は世界トップレベルとされています。
今回の訪問では、研究員のKaufmannさんに、通訳の方を通じてお話を伺いました。パッシブハウスの基準は世界各国の省エネルギー基準の中で最も厳しいと言われ、基準を満たすためには、窓や断熱材、換気装
置の選別、気密・断熱の施工技術力、熱損失や消費エネルギーの計算など高レベルな建築設計並びに施工が求められています。断熱材や窓ガラスサッシなどは日本で使われているものより数倍の大きさをもち、高い断熱性と機密性を保持していました。ドイツは、1970年代の第2次オイルショック以降から、国全体で建物の省エネ化に取り組み始めたという背景があります。長期に渡る研究・努力の積み重ねで、世界トップレベルといわれる性能が生まれたのだと、ドイツの環境に対する熱意を感じることができました。
ドイツに学ぶ『働き方』について Erfuhr von den German Weg zur Arbeit.
ドイツといえば労働先進国、ワークライフバランスのお手本と言われる程、その働き方が注目されている国です。前記のパッシブハウスの方や、現地ツアーコンダクターの方々に、ドイツの働き方、環境などについてのお話を伺いました。ドイツは日本と比べ、短い労働時間で結果を出し、質の良い仕事をしています。国の厳しい規律やサポートも充実しており、柔軟な働き方が認められているので、とても働きやすい環境だということでした。現在の日本の課題でもある『働き方』について、私たちも深く考えさせられました。
フリートーク・コラム「東京支店スタート!」
はじめまして、東京支店マネージャーの小川です。今回は、東京支店が開設した頃の思い出を書かせて頂きます。
弊社はもともと江東区住吉に東京営業所がありましたが、平成二十六年四月、亀戸に東京支店を開設し、住吉の営業所から亀戸の支店への引越しをすることになりました。およそ一ヶ月で事務所の形が出来上がり、仕事が出来る体制になると、まずは事務所近くから新規開拓訪問の営業活動を行う事になりました。ですが、当時の東京支店メンバーは現場経験しか無い4人しか居らず、営業が一人もいませんでした。これから如何するのか…と迷いながらの東京支店のスタートとなりました。
地元の千葉から離れ、東京の土地勘もありません。右も左も分からないので、インターネットなどで事務所近くの江東区・江戸川区・墨田区・中央区と関わりが出来そうな御客様を調べて、ピックアップをし、手当り次第に訪問活動を行いました。
『東京に支店を開設しました』といって、仕事が飛び込んでくる程甘いものではありません。活動をしながら、少しずつ訪問する範囲を広げ、医療機器を取り扱っている御客様や工業地帯にターゲットを絞り、一社一社訪問して行きました。
そして一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月…と時間は過ぎて行きますが、これまで毎日毎日、新規開拓活動をしていたにも関わらず、問い合わせも依頼も全くありませんでした。「このまま仕事がとれないのでは…」と、私自身、焦りと不安に襲われたこともありました。
そんな中、某工業地帯の鉄鋼を扱う会社数百社に、東城専務とメンバーとで何度も訪問しました。このフィデスレターや提案書などを活用し、五周近く訪問した頃、初めて訪問先の御客様からの見積依頼が来たのです。その日の内に見積を作り、本社に戻り押印をし、その日の内に御客様に見積の提出に上がりました。すると数日後、御客様より稟議が下りたから、と注文のご連絡を頂きました。十数万円の受注でしたが、本当に感激した瞬間でした。今でもその時の出来事を鮮明に覚えています。
そして現在に至るまで、東京支店とお取引して下さる御客様が徐々に増えて来ました。東京支店としてスタートして三年、まだまだこれからも営業活動を続け、そして御客様にご満足して頂ける施工を心掛け、今後も精進して参りますので、東京支店を宜しくお願い致します。
今月の担当は…
東京支店マネージャー
小川 邦雄